私の通っている心療内科でなかよくなったA子さんの手首には
白いサポーターが巻いてある。
リストカットの痕を隠しているのだ。
手首のサポーターを見た時から
「リストカットだろうな」
と気付いてはいたが、本人には言わず、普通に接していた。
心療内科でやっている、ディサービスで何回かA子さんと一緒になった。
そのうちA子さんの方から話してくれるようになった。
「これねえ、リストカットの痕なの、心がすごく不安になると、つい切っちゃうの」
「赤い血がパーッと出ると、その瞬間だけ、心がスーッと落ち着くの」
私にはリストカットの経験はないけれど、不安な心はいつも持っている。
渡しの場合は、不安を多食でごまかしているところがあるが
A子さんはリストカットで心を治めているのだろう。
A子さんが統合失調症になったのは20歳のとき、
現在は43歳だが、一見したところ20代後半にしか見えない。
A子さんの統合失調歴は23年、ということになる。
でも、A子さんは日常生活は普通におくれている(働いてはいない)
友達と旅行に行くこともできる。
「この病気が治ったら、この(リストカットの)痕を形成外科で治そうとおもうのよ」
と、A子さんは言った。
A子さんはご両親や、ご兄弟の理解もあるし、穏やかに暮らしている。
病気が治って、形成外科に行く日がくるといいな
と私は願ったのだった。