メンタルクリニックの待合室に
20代前半、と思われる女性がいた。
女性は襟に毛皮の付いたオーバーを着て
くすんだピンクの毛糸の帽子をかぶって、ベージュのブーツを履いていた。
可愛いバックを持っていて、見ただけでは
今時の普通の娘さんに見えた。
だが、その女性は絶えずしゃべっている。
「○○さんが、来てねえ、・・・・と言ったの」
内容は聞き取れないが、絶えずしゃべっている。
主に現状に対する不満を言いつのっているようだった。
最初は、空中に向かってしゃべっているのか、と思った。
いわいる統合失調症の独語(どくご)というヤツだ。
だが、しゃべっている先には一人の男性がいた。
見たところ、30代初めくらい。眼鏡をかけた体格のいい人だった。
男性は女性の話に相づちを打つでもなく
黙って座っている。
が、受付で名前を呼ばれたらしく
女性の手を繋いで引っ張るように連れて行った。
男性と女性は、おそろいの指輪をしていた。
「ああ、ご夫婦なのか」
と思った。
統合失調症の結婚には2種類ある。
- 健常者と患者
- 患者同士
である。更に 健常者と患者、というカップルの場合、
- 患者は結婚後、統合失調症を発病した。
- 患者は、結婚前から統合失調症を患っていた。
私の目撃したご夫婦は 健常者と患者で 患者は結婚前から統合失調症を患っていた。
というように見えた(あくまで推測にすぎないが)
このケースは演出家の岡村俊一氏と結婚した藤谷美和子と同じだろう。
この場合、健常者が患者の保護者になる。
次に患者同士の結婚だが、ある程度寛解に近い二人なら生活が可能である。
が、寛解していない患者同士の結婚には、どうしても外部の手助けがいる。
親とか、兄弟とか、役所関係の人とか。
ネットで読んだ話だが、親が知らない間に患者同士が勝手に結婚していた
と、いうケースがあるらしい。その場合、外部の人間への負担は、かなり大きい。
だが、統合失調症だから、結婚できない。ということはない。
よりよい生活を求める権利は、患者にもあると思う。